読書の日記#56「トギオ」を読む(完)(マシュマロリクエスト企画)

今日はあんさんぶるスターズ!!で推しのキャラクターがいい感じに扱われたのでめちゃめちゃ気分がいいです。

「トギオ」読み終わりました!ミステリーの枠に収まりきれない爆裂な世界観と端的に世界観を表せる文章力でとてもすごい作品だと思いました。このミス大賞ってこんなすごい作品も排出してるんだなと感動しました。

第4部は様々な陰謀に巻き込まれつつも自分のやりたいことを優先しクラゲリラの絵を描いて(正確には貼り付けて)、蜻蛉の復讐にあい美香子が死に、混乱した頭のまま、東暁の沈没に巻き込まれ、クラゲリラの絵が崩れるところを想像しながら白が泣き叫ぶのを想像し、笑いながら死亡するというなんとも言えないエンディングでした。
その後、白は東暁の水利権を掌握する地位に着いた後に東暁の部屋に引きこもり始めます。

文字にするとなんだこれ!?っていうような展開ですし、本作を通して読んでもなんだこれ……っていうような展開ですが、以下色々考えてみようと思います。

1.神格化の否定による主人公性の否定
客人と白の話を抽出すると客人が「蓮沼健」のことをある種の神格化をしていることがわかります。クラゲリラの絵を描いたことにメッセージ性を見いだそうとする等、その存在や行動に意義を見いだそうとします。
「トギオ」では「蓮沼健」こと僕の回想ではそういうような視点で読者が彼を見ることを排除しているような描写がめちゃくちゃ多いです。僕自体思想なんて興味がないということを再三繰り返し展開の中で疲労してますし……
客人は「蓮沼健」の人生を追うことを生き甲斐としてますが、この作品を読んだ人なら僕の人生はそんな神格化するようなものではなくしょうもないものであり、そんなものを勝手に考察するのは道楽と代わりないということがわかります。この点から、最後の白の台詞で「アホらしい」と言われているんだと思います。
「蓮沼健」が神格化されないただの人間とされることで、彼はそこら辺に転がるただの人間と代わりがないといえます。つまり、「トギオ」は主人公であるはずの「蓮沼健」の主人公性を否定した小説なんだと思います。
「蓮沼健」は単なる1人の人間であり、神格化される主人公たるような人間ではないというのが「トギオ」の面白いところだと思います。

2.白は何故引きこもったのか?
白は「ここに全てがある」から外に出る必要がないとして世界に影響を与える力を持ちながらも引きこもり生活をします。
これに対して客人は「蓮沼健」のことを思うのであれば引きこもらずに外に出て世界の為に働くべきであると主張します。
しかし、上でも書いた通り「蓮沼健」は単なる私欲にまみれた人であり、そのような期待を白にしていないことは本書を読んできた人ならば明白かと思います。
白は兄の記録媒体であるオリガミを持ち、兄の人生を狂わせたことを思いつつも、そのオリガミを持つことで満足しているんだと思います。これは推測ですが、白は兄のことを思いつつ、その痕跡を辿るために水資源を牛耳る存在にまで躍進しただけなのではないでしょうか。彼の記録媒体であるオリガミを手に入れた今もう目的は達成したため、外に出る必要がなくなったと私は考えてます。
結局、白も「蓮沼健」も大した理想も描いていない私欲だけのただの人なのだと思います。

3.トギオの読み方
「トギオ」はお世辞にも読みやすい小説とは言えません。何故ならば類型的なジャンルパターンに当てはまるような小説ではない上に、世界観が独特だからです。
まず、この小説をミステリー小説だと考えて読むのは止めた方がいいと思います。所謂ミステリー小説とは全く筋が違います。強いて言えば異世界SFノワール小説が一番近いのかな、と思いますがノワール小説のような罪と罰の吟味のような渋みはなくただ欲望が撒き散らされているので、やはりあまり類型化しないで「トギオ」は「トギオ」っていう小説なんだと思って読むのがいいかと思います。
次に、世界観が独特な点については初見でよくわからないことについては「そういうもの」なんだなで流していいかと思います。パッと見現代小説みたいに読めますが、この世界は現代とは全く異なる世界のお話です。SF小説を読むように現代の理屈や価値観は持ち出さないように読んだ方がいいと思います。
特に「オリガミ」という作中に何度も登場する重要ガジェットについてもこっちの世界の折り紙と結びつけずに作中に出てくる用途をなす機能を持った何かっていうざっくりした捉え方をした方がいいかと思います。正直これ何なのかわかんなくても話の理解に差し障りがないので……
独特な世界観を持つ、よくわからない世界観の本作ですが、下手に現代の何かに当てはめずにそのまま文字通りとらえることが重用なのかなと思いました。客人と白の会話も、下手に何かの規範に捉えてしまいミスリードしてしまった客人とあるがままの彼を見ていた白の対比がされてる辺り、よくわからなくても文字通りにそういうもんだと捉える方がいいんだという暗喩なのかなと考えています。

こんな感じになりましたが、どうでしたか?!マシュマロで感想くれると嬉しいです。
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