読書の日記#46「虐殺器官」を読み終えた⑥

ようやく調子が戻ってきたので精神が安定して読書が出来るようになってきた私です。

今日はようやく伊藤計劃虐殺器官」を読み終えました。本書は哲学的な罪と罰の話の側面とSFアクションのエンタメ小説の側面が高度に入り交じった小説だと思いました。このバランスが悪かったら読みづらかったり、底のの浅い小説になったりしちゃったと思うので、著者のバランス感覚はスゴいなと思いました。
本作品は人を殺すことを生業とする主人公が自身の罪と罰に苦悩しその結論を出す物語です。罰という救いを求めて自分の意思で動いた結果、その罰は与えられず主人公は最終的に自ら罰を与えることになってしまいます。最後に自分で罰を与えた、とあるけれどもそれまで求めていた罰とは異なり、自分で与えた罰は救いにはなってないんだろうなと思うとこの小説はバッドエンドだなぁと思いました。
というかこの小説に出てくる人は基本的に何らかのお題目を持ちつつも人を殺すという罪を背負っている罪人なんだよな。その罪人達がどう生きているかを描いた人間の小説の側面もあると思った。主人公は科学の力で、ある人は愛国心で、またある人は過去の後悔から生まれた信念で、罪悪感を減らして生きていたけどそれは罪を消すことにはならない。最終的に生き延びた主人公の選んだ選択は正しさの問題ではなく、主人公が罪をどう受け止めたかの結果なんだろうなと思いました。一人現世という地獄に置いていかれた主人公はこの先もあの地獄の中で罪を背負い続けるんだろうな。
なんというか思っていたよりも重いエンディングを迎えてびっくりしました。面白かったです。