「ナイトクローラー」

 

映画が好きな人の間で話題沸騰中の「ナイトクローラー」観てきた!!!他の人が観てると観たくなるアレです。

以下、パンフレットの監督のインタビューを踏まえて映画のネタバレしながら感想を書きます。これはネタバレ観ても楽しめるタイプの映画だとは思うけど、名作なので未視聴の方はネタバレ見ないで観た方が良いかと…

 

あと、パンフレットは監督のインタビューとか載ってるので買った方がいいかと思う。監督インタビュー以外も面白かった。

 

 

 

「ナイトクローラー」(2014/アメリカ/118分)

監督:ダン・ギルロイ/脚本:ダン・ギルロイ

 

簡単に言えば、パパラッチの奮闘を描いた映画。パパラッチっていうと、芸能人をつけ回して恋愛沙汰とかのスキャンダルを引っこ抜く人のイメージがあるけど、本映画のパパラッチはそういうタイプのパパラッチじゃなくて、犯罪現場や事故現場の映像を半ば無理矢理撮影する人が出てくる(タイトルの「ナイトクローラー」はこういうタイプのパパラッチを意味する言葉)。日本の報道とかで、犯罪被害者とかを執拗に追い回して撮影してる人達が近い存在かと。

 

◆シナリオ周りの凄いと思ったところ

まず、主人公のルイスが迷うところを出さなかったのが凄い。大体こういう人の不幸を飯のタネにするアングラな仕事の話だと、大体主人公が悩みを見せて仕事の是非の話になりがちなんだけど、この映画ではそういう部分が殆どない。最初からルイスは一貫して不幸を飯のタネにすることに迷いがない。主人公の葛藤を出さなかったことの利点は、物語の停滞を防ぐことだと思う。主人公が悩むと話が進まなくなりやすいので、アクション映画でないのにアクション映画以上の疾走感があるのはこのお陰だと思う。

※勿論だけど、キャラの葛藤を出すことで感情移入しやすくしたり、タメを作ることで爽快感を出すこともできるので、葛藤を描くことがダメだというつもりはない、というか基本的には葛藤とか抜かすと薄っぺらくなりやすいから、描かなきゃ不味いところで描かないとダメだと思ってる。

 

次に、上でも書いたけど疾走感が凄い。疾走感ってアクション映画やサスペンス映画だとアクション等をしてれば割と疾走感出しやすい。他方、非アクション映画だと話の進みが上手くないと出せない印象があるんだけど、「ナイトクローラー」はマジで疾走感が半端ない。カーアクションしてるところも寄与してるんだろうけれども、それ以上に主人公が迷わずにボコボコ進んでいくところが最高に清々しくて疾走感がある。

 

◆歪な行動倫理を持つ主人公・ルイスについて

パンフレットの監督のインタビューによると、ルイスは「人々との結び付きを求めながらも口をつく言葉がことごとく外れている」人物だそうだ。その結果、彼は社会に完全に合わせることが出来ずに物語開始時には孤立していた。

確かに彼の行動はかなりズレている。ニーナに若干チヤホヤされた瞬間にどや顔で自己語りし始めた頃はクソ痛い男程度だったが、自信をつけるにつれて完全に彼女を支配しようとし始める。部下への対応も部下を支配するように行動しており、それが上手くいかなくなり始めたリックのことを最終的には殺している。彼の行動は基本的に上下しかなく、自己と同格の人間と関係性を作るという意識がない。まぁ会社に関しては、ワンマンで回した方が効率良いのでルイスの行動が間違っているとは言いがたい部分はあるが。

 

ルイスが人との交流を求めているのはニーナへの執着の度合いでもわかる。作中でルイスは成功し車を高級車に乗り換えても、ずっと自分と歳が明らかに離れたニーナにずっと執着していた。これは成功のステータスとして女性を求めるのであれば誰もが羨む若い女性(ニュースキャスターの女性とか)を求め始めるにも関わらず、ルイスはずっとニーナを求めている。これは彼が成功の証として女性を求めているというよりも、ニーナとの人的な結び付きや交流を求めていることの現れであるように感じた。

 

◆これは究極のサクセスストーリー?

パンフレットの監督インタビューの見出しが「これは究極のサクセスストーリーだ」となっているように、「ナイトクローラー」は主人公のサクセスストーリーである。ただ、いわゆるサクセスストーリーの映画は主人公が社会的に模範的な人物であるが、「ナイトクローラー」はむしろ真逆のような人物のサクセスストーリーだ。

主人公のルイスは倫理や道徳という枷を意識せずに行動しており、成功に向けて非常に合理的に進む。パンフレットにもあったが、上記の枷を意識しない方が合理的な最善策が取れる(まぁ、あまり周りに迷惑かけるとチームプレイの場合、長期的には最悪となることの方が多いと思うぞ!ルイスの行動が成功に結び付いたのはフリーランス形態であるナイトクローラーだからだと思う)。これらを全面に出してサクセスストーリーを描いた、究極のサクセスストーリーが「ナイトクローラー」である。